札幌地方裁判所 昭和51年(ワ)1385号 判決 1978年3月20日
札幌市東区中沼町一八番地
原告
有限会社光栄地所
右代表者代表取締役
川端正雄
右訴訟代理人弁護士
下坂浩介
東京都千代田区霞ヶ関一丁目一番地
被告
国
右代表者法務大臣
瀬戸山三男
右指定代理人
末永進
同
本間敏明
同
大山瑞彦
右指定代理人
西田将
主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
(原告)
一 原告と被告間で、原告名で昭和五〇年一二月二六日提出の修正申告にかかる自昭和四六年七月一日至同四七年六月三〇日事業年度に関する金五四万二、四〇〇円の法人税債務および自同四七年七月一日至同四八年六月三〇日事業年度に関する金五、一〇七万四、三〇〇円の法人税債務がそれぞれ存在しないことを確認する。
二 訴訟費用は被告の負担とする。
(被告)
主文同旨。
第二当事者の主張
(原告の請求原因)
一 原告は、昭和四五年一〇月二〇日不動産の売買、斡旋、仲介を目的として設立された有限会社である。
二 被告は、原告が谷地浩税理士を代理人として、昭和五〇年一二月二六日、自昭和四六年七月一日至同四七年六月三〇日および自同四七年七月一日至同四八年六月三〇日の二事業年度にかかる原告の法人税修正申告を行ない、前者の事業年度(以下、昭和四六事業年度という。)について金五四万二、四〇〇円、後者の事業年度(以下、昭和四七事業年度という。)について金五、一〇七万四、三〇〇円の各法人税債務を負担した旨を主張する。
三 しかし、原告は右訴外谷地浩に対し、右修正申告を行なうに代理権を付与した事実はなく、したがつて、右修正申告は原告の意思に基づかず、また、申告内容は真実とも合致しないから右申告の効果はない。
四 よつて、原告は被告に対し、右の各法人税債務が存在しないことの確認を求める。
(請求原因に対する認否)
一 請求原因第一項は認める。
二 同第二項は認める。なお、原告の法人税の税額に関する詳細は別表のとおりである。
三 同第三項は否認する。
本件修正申告は、原告代表者川端正雄の意思に基づいてなされた。右申告書に押捺されている原告代表取締役印および同代表者川端正雄の個人印は、いずれも昭和五〇年一二月二五日右川端正雄の依頼により、同人の妻川端初枝が訴外谷地浩税理士事務所に来訪し自ら押捺したものである。また、昭和五〇年五月二四日付で右川端正雄から右谷地浩に対し、右修正申告を委任する旨の書面が作成されており、同書面によつても右谷地がその申告を行なう権限のあつたことが明らかである。
四 同第四項は争う。
第三証拠
(原告)
一 甲第一ないし第四号証、第五号証の一ないし六、第六号証の一および二、第七号証の一および二、第八(写)、第九号証(写)。
二 証人川端初枝
三 乙第一ないし第四号証の成立は否認する。但し、第一・二号証の原告代表者および経理責任者名下の印影がそれぞれの者所持の印章、第三号証の原告代表者名下の印影が右の者所持の印章によつて各押捺されたものであることは認める。第五号証の成立は認める。
(被告)
一 乙第一ないし第五号証。
二 証人谷地浩
三 甲第五号証の二の成立および第八・第九号証のうち所得金額の計算欄に「→谷地会計」とある記載部分は不知、その余の甲号各証の成立(第八・第九号証については原本の存在とも含む趣旨である)はすべて認める。
理由
一 請求原因第一項の事実は当事者間に争いがない。
二 乙第一・二号証の存在および証人谷地浩の証言によると、谷地浩(税理士)は昭和五〇年一二月二六日原告を代理して請求原因第二項に記載する内容の修正申告を行なつたことが認められる(他に認定に反する証拠はない)。
三 そこで、原告が谷地浩に右代理権限を授与したか否かについて判断する。
乙第一・二号証中、原告代表者そして経理担当者川端正雄名下の各印影がそれぞれの印章によつて押捺されたものであることは当事者間に争いがなく、したがつて、反証ない限り右各印影は右の者の意思によつて顕出されたものと推定されるところ、この点についての証人川端初枝の証言は、反証と認めるに足りず、他の反証はない。したがつて、右書証は真正に成立したものと推定すべきである。右乙第一・二号証、成立に争いがない乙第五号証、証人谷地浩の証言、以上の証拠により、成立を認める乙第四号証(押捺された印影は前顕乙第一・二号証にてらし川端正雄の印章によるものと認められる)とを総合すると、原告代表者は、昭和五〇年五月二四日右谷地に対し、右代理権限を授与したこと、更に本件申告に際してもあらためてこれを承諾したことが認められる。
もつとも、前顕乙第四号証(右代理権限授与を証する書面)には、原告の印影ではなく原告代表者個人の印影が押捺されているが、その委任事項との関係からみて個人からの委任と解することは相当でなく、したがつて、右個人印押捺の事実は前認定の妨げとならない。証人川端初枝の証言は、前認定を覆えすに足りず、他に右認定を左右し得る証拠はない。
四 その他全証拠によるも前記修正申告に過誤を認めることができず、原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 丹宗朝子 裁判官 前川豪志 裁判官 上原裕之)
一 (自昭和四六年七月一日 至昭和四七年六月三〇日) 事業年度分
<省略>
二 (自昭和四七年七月一日 至昭和四八年六月三〇日) 事業年度分
<省略>